04
一軒のお店に麦わらの一味は揃っていた。
ルフィが先程までご飯を食べていた店だ。
他に客は居らず店の店主夫婦と数人の島民に麦わらの一味だけの空間は異様にピリついていた。

「どういうことなんだ。どうして止めたんだ」

煙草の煙をはき出しながらサンジは眉根を寄せて問うた。
しかし返事は得られない。

「あいつ誰なんだよえらそーに」

ぶすくれた顔で気に入らないと全面に出しながらルフィは肉を食べる。
そんなルフィに小さく溜め息をつき、ナミが島民を見回した。

「ねぇ、さっきのあいつ。天竜人ってのと関係あるの?」

その問いかけに島民達の空気が変わった。
明らかに動揺している。

「なんだ?その天竜人ってのは」

「さっきフルーツ屋さんが言ってたの。天竜人のせいで、って。私も名前は聞いたことあるんだけど…」

「天竜人は、」

ビビがそう言った時、今まで何も言わなかった島民の一人、年のいったおじいさんが話し出した。
その声に一味の視線が移される。

「天竜人は、世界貴族じゃ」

「えらいのか?」

「えらいなんてもんじゃない。天竜人は絶対なんだ」

「じゃあさっきの偉そうな奴も天竜人なのか?」

「いや、あいつは違う。が、今この島を支配しているのはあの貴族なんだ」

次々と話し出す島民にナミとビビは思い出したようにあ、と声を上げた。

「そういえばあのおばさん貴族に支配されてるって言ってた」

「ええ。ねぇ、あの子って誰なの?」

フルーツ屋のおばさんが最後に言ったのが、あの子まで…。
そのあの子というのが誰なのか二人は気になっていた。
だがあの子と聞いた途端、島民が先程よりも顔色を暗くした。
つらい、と。

「!おいまさか…」

勘が鋭いサンジは気づいたのだろう。
あの子が誰を指すのか。

「っあぁ、そうだ。金髪の兄ちゃんが思ってる通りだよ」

「さっきの女の子さ。あの子は6歳の時、天竜人に連れ去られたんだ」

「え!?」

「あの子は6歳で先の人生と唯一の家族である両親を奪われた」

「両親、ってまさか…!」

「殺されたんだよ!天竜人に!」

悲痛に叫ぶ人、涙ぐむ人、涙を流す人。
この場に居る島民は皆、当時それを目の当たりにした人達だ。
目を瞑れば蘇る、あの日の惨劇。
女の子の叫び声。
両親の叫び声。
天竜人の笑い声。
どれも鮮明に蘇ってしまう。

「6歳って…何でそんな小さな子を!?」

「あの子、キーラはその当時からこの島の誰よりも優れた薬剤師だった」

「そして不思議な力を持っていたんだ」

「…悪魔の実?」

「いや悪魔の実ではない。キーラのアレは生まれた時から持っていたものだ」

「何なの?その力って…」

「人を、殺せてしまうんだ」

「殺す!?」

「どういうこと!?」

「素手で触った相手を自分の意思とは関係なく殺してしまうんだよ」

「だが反対に生かすことも出来る。瀕死の人間に触れればたちまち元気に命を吹き返す」

非現実的な話に驚きを隠せない一味だが、一人だけ違った。

「すげーな!よし、そいつ仲間にしよう!」

「ちょっとルフィ!聞いてたの!?」

「なにが」

「その子は天竜人に捕まってるの!」

「だから?」

「だから、ってあんたね…!」

キラキラワクワクと表情を輝かせるルフィとは反対に慌てた様子のナミ。
ナミの訴えもルフィには響かず、笑った。

「いいじゃねえか。ぶっ飛ばせばよ」

「…」

一同が呆然とする中ルフィは続ける。

「それにそいつ薬作るのうめーんだろ?良かったなチョッパー!」

「え!?あ、お、おう」



mae tugi

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