09
それは突然だった。
何年も色のない世界だった。
出口がなくて、死ぬまで私の生活は変わらないんだと思ってた。

けど違った。

夢見る乙女チックな少女じゃないけどそう思ったって仕方ない。
本当にそう見えたの。
見張り役を倒して私の前に現れた金髪の人が、私には王子様に見えたの。

まさかこんな事をしてくれる人達がいるだなんて思いもしなかった。

私に向けられる青い目があまりにも優しくてどうしたらいいのか分からなかった。
差しだされた手を取っていいのだろうか。
私はここに捕まってなきゃいけないんじゃないか。
だって私が逃げたら島の皆が何をされるか、考えただけでも恐ろしい。
それでもサンジと名乗る王子様は躊躇う私の手を取って立ち上がらせてくれた。
大丈夫だと言って。
初対面なのにどうしてこんなにもスッと言葉が入ってくるのかしら。
本当に大丈夫なんだって、思ってしまうわ。




乗り込みは翌日、から警備が甘くなるであろう夜中に変更した。
ナミさんの指示で各自散らばる。
おれはキーラちゃん救出の使命を承った。
島民の話しじゃどうやら地下牢に入れられているらしいが、貴族とやらは何を考えてんだ。
レディをそんな所に放り込むなんて。

とりあえず下に向かわなきゃならねえからとひたすら走ってんだが、如何せん無駄に広い屋敷なだけに見つからない。
と思っていたが明らかに地下入口だろっての見つけちまった。
階段を降りていけば見張り役がウロウロ。
どうやらビンゴだな。
片っ端から蹴り上げて先へ進む。
しっかし大したことない奴ばかりだな。
こんなんでいいのか?
薄暗く肌寒いこんな場所に可愛いレディが居ると思うと怒りがふつふつと沸いてくる。
あぁ、温かい毛布とミルクを差し上げたい…。

「貴様何もの─!?」

見張り役とは名ばかりの雑魚を蹴り上げた時、そいつらはとは違う気配がした。
視線を向ければ格子越しに目を見開きこちらを呆然と見やるレディが一人。
エメラルドのような大きな瞳がこちらを見ていた。
美しい。
気付けばおれは吸い込まれるようにレディ、基キーラちゃんの傍へ。

「助けに来ました、プリンセス」

突然のことに戸惑いを隠せないのか瞳が揺れる中キーラちゃんは小さく呟いた。

「、あなたは、」

だれ?
と続くであろうそれは紡がれず。

「おれはサンジ。さぁ速く逃げましょう」

「!だめよ、逃げたりしたら…っ」

逃げたいけど逃げられない。
そんな葛藤をするキーラちゃんの心配の種は島民だろう。
自分が逃げれば島民があのくそ貴族にやられてしまうんじゃないか。
だが心配無用。
貴族の元にはルフィが行った。
…ついでにマリモも。

「大丈夫だ。だから行こう」





mae tugi

booktop


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -