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「おかあさーん、吾郎まだ?」
「そうなのよ!あの子大丈夫なのかしら」
自分の荷物も整理し終わって、一人ママチャリで来る吾郎を待っていたがあたりが暗くなり始めても全く帰ってくる気配がない。
「先ご飯食べちゃおっか」
そう桃子がにっこり笑って妃に言う。
「ふふ、うん」
「真吾どうしてるかなぁ」
「はしゃいでるんじゃないかしら?妃は良かったの?」
「うん。吾郎にね、一番にお帰りって言いたい」
微笑んでそう答える妃は本当に美しく、可愛らしい。
それを見て桃子も笑う。
「妃は本当に吾郎が好きね」
二人だけの食卓だけど、それでも母子仲が良く会話には困らない。
楽しく食事を終えた後、流石にそろそろ帰ってくるかな、と妃は玄関に向かう。
「妃どこ行くのー?」
「家の前で吾郎待ってるー!」
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数分表札の前で待っていたら横から自転車と人の足音。
横を向けばそこにはやっと帰ってきた吾郎が居た。
「おかえり吾郎!」
妃は駆け出しそのまま吾郎に抱きつく。
「うお、妃?なにしてんだよこんなとこで」
「いつまでたっても帰って来ないから外で待ってたの」
「さみーだろうが、中に居りゃ良かったのに」
こんなに冷てーと抱きしめ返してくれる吾郎にくすぐったいと笑いながら妃は自転車のボロボロ加減に驚いた。
そして二人で家の中へ入る。
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