あおいそら

嘘から出たまこと

「…実は私達、結婚します」

 松野兄弟を驚かせるべく、前日話し合っていたとおりの言葉を紡ぎ…冗談で書き上げた婚姻届を見せつけた。
 今日はエイプリルフール…きっと死ぬほど驚いてくれるハズ。そう思いながらニヤニヤしそうになる顔を必死で取り繕う。
 さぁ、どんな反応を見せてくれるのか…ワクワクが止まらない。

「え、マジで!?」

「そっかー、ついにカラ松兄さんゴールインかー」

「思ったより断然早かったね。
 まぁ、想像通りだけど」

「え、なに?
 今日からアオイが俺の義姉?」

 口々に驚いた声を上げている…けど、思ったより反応が悪い。
 もっと、こう…大慌てしてくれると思っていたのに、何故かニヤニヤと頷いている。
 カラ松もこの反応は予想外だったらしく、固まっている。

「ちょっと、カラ松…全然驚いてないじゃん」

「そ、そうだな…予想外だ」

 隣に座るカラ松を肘で突きながら、小声で耳打ちすると困った表情で私を見返してくる。
 発案者はカラ松なんだから、何とかして欲しいのだけど。

「じゃあ、気が変わらないうちに…」

「そうだね、さっさと出しちゃおう」

「いやー、これで暫くは結婚しろって言われずに済みそうだなぁ」

 机の上に置いた婚姻届をトド松が手に取り、それに合わせるように立ち上がったチョロ松と共に部屋を出…って、ちょっと待って!

「ちょっと!それもってどこ行く気なの!?」

 慌てて追いかけると、キョトンとした表情でトド松が振り返って、市役所に決まってるでしょ?と返された。
 理解できず、トド松に手を伸ばした状態で停止すると…何を思ったか十四松がビュンと近付いてきてトド松から婚姻届を引っ掴んだ。

「僕が代わりに出してきてあげるね!!」

 ニッコリと人好きのする笑顔を浮かべた十四松は、止めるまもなく部屋を出て…家から飛び出していった。
 呆然と見送った私とカラ松は、こうして公式に夫婦になったのだった。
 …暫くはエイプリルフールのネタだってことは言えないなぁ。

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