▼ 凶王
「トリック オア トリート!」
仕事が一段落したのか、廊下を歩いているのを発見したので…絶対に伝わらないであろうワードを投げつける。
案の定、首を傾げた三成をニヤニヤと見つめながら様子を伺う。
「とり…?
…呪文かなにかか?」
「トリック オア トリート、って言ったんだよ。
私の世界では毎年10月31日に行われてる南蛮発祥の祭りで、本当は収穫祭だったんだけど…いつの間にか変わった格好してお菓子もらう祭りになってた。
ちなみにトリック オア トリートはお菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ!っていう意味。」
なんとなく得意げに説明すると…三成はモゴモゴとなにかを呟いた後、私を鋭い目で見つめてきた。
思わずなにかしたかと考えたけど、何もしてない…ハズ。
「菓子を持っていない」
真顔でそう言い切った三成にビックリする。
そもそもお菓子を持ち歩くようなキャラではないので、持ってないのは承知の上だけど…本人が言ってくるとは思ってもいなかった。
「言ってみただけだから、気にしなくて良いよ」
「…だが」
予想外の展開になったけども…当初の予定に合わせるべく、反論しかけた三成の腕をがっしり掴んで、お団子用意したんで食べましょう。と引っ張る。
納得がいかない様子の三成だけど、逆らうことなく付いてきてくれたのでよしとする。
「待て、どこへ行く気だ」
「え、お団子を食べに"桜花亭"へ」
玄関を出たあたりで三成に問いかけられたので、正直に答えたのに…三成は溜め息を付きながら私の腕を掴んだ。
キョトンと三成を見上げると、歩いて行く気か。と厩の方へと引きずられた。
あぁ、馬で行くのか…でも。
「…私は馬に乗れないよ?」
「フン。そんなことは承知している」
そう言いながら三成の愛馬を連れてきたかと思うと…私を抱き上げて乗せた。
おぉ、三成案外力あるな。と一瞬現実逃避してしまったが、なんで私馬に乗せられた?と首を傾げた瞬間、後ろに三成が乗ってきた。
「行くぞ」
「…あっ、ハイ」
耳に当たる声にビクッと身を震わせながら頷いた。
たどり着くまでの間、耐えられるかな…?
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