あおいそら

凶王

「トリック オア トリート!」

 仕事が一段落したのか、廊下を歩いているのを発見したので…絶対に伝わらないであろうワードを投げつける。
 案の定、首を傾げた三成をニヤニヤと見つめながら様子を伺う。

「とり…?
 …呪文かなにかか?」

「トリック オア トリート、って言ったんだよ。
 私の世界では毎年10月31日に行われてる南蛮発祥の祭りで、本当は収穫祭だったんだけど…いつの間にか変わった格好してお菓子もらう祭りになってた。
 ちなみにトリック オア トリートはお菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ!っていう意味。」

 なんとなく得意げに説明すると…三成はモゴモゴとなにかを呟いた後、私を鋭い目で見つめてきた。
 思わずなにかしたかと考えたけど、何もしてない…ハズ。

「菓子を持っていない」

 真顔でそう言い切った三成にビックリする。
 そもそもお菓子を持ち歩くようなキャラではないので、持ってないのは承知の上だけど…本人が言ってくるとは思ってもいなかった。

「言ってみただけだから、気にしなくて良いよ」

「…だが」

 予想外の展開になったけども…当初の予定に合わせるべく、反論しかけた三成の腕をがっしり掴んで、お団子用意したんで食べましょう。と引っ張る。
 納得がいかない様子の三成だけど、逆らうことなく付いてきてくれたのでよしとする。

「待て、どこへ行く気だ」

「え、お団子を食べに"桜花亭"へ」

 玄関を出たあたりで三成に問いかけられたので、正直に答えたのに…三成は溜め息を付きながら私の腕を掴んだ。
 キョトンと三成を見上げると、歩いて行く気か。と厩の方へと引きずられた。
 あぁ、馬で行くのか…でも。

「…私は馬に乗れないよ?」

「フン。そんなことは承知している」

 そう言いながら三成の愛馬を連れてきたかと思うと…私を抱き上げて乗せた。
 おぉ、三成案外力あるな。と一瞬現実逃避してしまったが、なんで私馬に乗せられた?と首を傾げた瞬間、後ろに三成が乗ってきた。

「行くぞ」

「…あっ、ハイ」

 耳に当たる声にビクッと身を震わせながら頷いた。
 たどり着くまでの間、耐えられるかな…?

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