▼ 箱押し
「みんな集まった?
…とりあえず、番号!」
「いち!」
「two!」
「三」
「…し」
「ごーぅ!」
「6♪」
松野家の二階の閉めきった部屋に皆で集まって、女神さまからのプレゼント確認をすることになった…ので、なんとなく揃ったか数を確認してみたわけですが。
…なにもそこまで個性出さなくても。
「あー、みんな居るっぽいね?
んじゃ、まず1つ目のプレゼントを…」
グッタリしながらも話を進めていると、勝手におそ松が1つ目の箱を開けた。
ニヤニヤしていたのに、突然真顔になったので…皆でのぞき込む。
「これは…」
「あー。灯油、だね」
「…見たらわかる」
「でも、なんでこの時期に灯油?」
首を傾げる六つ子ちゃん達の前に、捨てられそうになってたホワイトボードをガラガラと持ってきて…私が勝手に説明をはじめる。
「説明しよう!
この誕生日企画をはじめた時期、まだ寒かったのです。
確か…2月」
「早いね」
「そしてその頃…アニメでは灯油話を放送してました」
「あー、あったね。そんなこと」
「その話では、灯油が無くて苦しんでいました。
それを見た女神さまは慈悲の心で灯油を下さったのです。
わかりましたか?」
「うーん」
話はこれで終わり。と、ホワイトボードを元の場所に戻す。
てか、ホワイトボード使わなかったな…。
「気を取り直して、次は見てみようぜ!
…お!なんか重い」
スッと灯油の入ったポリタンクを部屋の隅に押し込んで、次のプレゼントを嬉しそうに持ってきて、開ける。
そして、また無表情。
「だから…なんでまた灯油?」
「説明しよう!」
ガラガラと素早くさっきしまったホワイトボードを持ってこようとしたら…もういいわ!とチョロ松に止められた。
…残念。
「あー。次、つぎに期待しよ!」
「流石に3回連続で灯油はないだろうしねー」
「今度のは軽いよ!」
少し疲れた様子で再度プレゼントを囲んで…やっぱりおそ松が蓋を開ける。
「…えっ?」
「どゆこと?」
「…カラなんですけど」
箱の中身はカラ…というか、幸せ。と書いた紙が1枚ピラッと入っているだけ。
今度はキョトンとする六つ子ちゃん達を見てニヤニヤしながら告げる。
「ほら、幸せって目に見えないじゃん?」
…物凄い目で見られた。
「次!」
血相が変わったおそ松が、荒々しく箱を引き寄せる。
中身が転がったらしく、ガラガラと音がして…その音に何故か六つ子ちゃん達が喜んで勢い良く蓋を開けた。
「って…こんなオチあり!?」
「缶詰…だよね」
「うん、缶詰だね。
なんか…膨張してるけど」
お互いに顔を見合わせながら、1缶だけ入っていた…シュールストレミング、つまりニシンの缶詰を見つめる。
不思議そうな顔をしながら、とりあえず開けてみようぜ!と、開けようとしたので私は素早く毒マスクを装着する。
「ちょっと待って!
…アオイちゃん、なにその装備」
「…え?」
トド松が目ざとく私の毒マスクに気がついたけど、時既に遅くおそ松は勢い良く缶を開てしまって…いや、爆発した。
そして部屋の中は大惨事。
…やっぱり外でするべきだったか。失敗、しっぱい♪と、脳内でボケながら服に臭いが移らないうちに退散しようと1歩踏みだそうとしたら…酷い顔で床を転げまわっていたカラ松に足を掴まれた。
息をするのすら苦しいようで、呻き声だったけど…なんとなく伝えたいことは分かる。
だが、スマン!自分の身が一番かわいいんだ!
一瞬、カラ松の頭を蹴りとばして逃げようかと思ったのは内緒で、できるだけ優しく振りほどいて素早く部屋から出る。
襖の前でホッとガスマスクを付けたまま一息ついた。
早く服洗お…。
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