あおいそら

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はじまり

√鬼灯 in ブラック本丸


 ここは何処だろうか?

 真っ暗な、自分すら見えず、謎空間と呼ぶしかない場所で上下も分からず、漂っている…そんな感じで、自分という概念すら、怪しい。
 私は何故こんな所に居るのだろうか。分からない。

 そうやって思考の海にどっぷり浸かっていると、突然真っ白な光が差し込み…吸い寄せられるように光の方向へと向かった――


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「――huhuhuhu。ワタシは千子m…」
「えぇ、なんで千子村正、それも亜種で女じゃないの!」

 目を開けたとたんに口が勝手に動いたが…目の前の化粧濃いめの女に遮られて口が止った。
 それと同時に、謎の記憶が流れ込んできた。そう、千子村正のである。
 その記憶によると、西暦2205年、時の政府は過去へ干渉し歴史改変を目論む"歴史修正主義者"に対抗すべく、我等刀の付喪神の力を借りた…ということだ。
 そんでもって、千子村正が徳川家に仇なす妖刀という事も理解した。

 …あぁ、うん。とうらぶ、ですね掌握。

 理解したところで、目の前の女を再度眺める。
 化粧が濃く…この気配?は――記憶によると神気?を色濃く取り込んでいる――つまり、夜伽的な?アレがソレした的な??
 まったく、濃いのは化粧だけにしてよね!と思いつつ、運良く主従の絆が結ばれてない事にほくそ笑む。
 どうやらここはブラック。隙を突いて通報してやりまショウ。

「アナタがワタシの主、デスね。
 huhuhu…ワタシが女で残念なようデスが、女にしか分からないものもありまショウ、是非お側でアナタの魅力を引き出させてくだサイ」

「…そうね、男ばかりで困る事もあるわね。
 じゃあ、貴方は今日から私の近侍ね」

「任せてくだサイ」

 口から出任せに適当な事を言ってみると、頭がゆるふわ〜だったようで、まかり通った。
 ありがとう、ゆるふわ女。と心で手を合わせていると、女は部屋を出る間際、用があったら言うから、好きにしなさい。と傲慢に言い放った。
 つまり、この本丸内を自由に過ごして良いという事ですね。有り難うございます。


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 …おかしい。色々な場所を回ったが、誰にも会わなかった。厨にも誰も居ないし、ついでに覗いた風呂場にも誰も居なかったし。
 私以外居ないのか?と思ったが、気配は感じる。でもその気配は部屋から全く動かないし…なんていうか、短刀の気配が全くしない。
 偵察値が低いから気がつかないだけかもしれないが…まさか、ね?

 とりあえず、暇だし。と再び厨にやって来た訳ですが…冷蔵庫を開けてみて驚いた。なんもない。それどころか、コンセント刺さってない。無言で閉めた。

「…えっ?……誰??」

 冷蔵庫を閉めた瞬間、背後から声がかった。
 動揺したその声にあえて慌てず騒がず、余裕を持って笑顔で振り返る。

「始めまして、デスね。ワタシは千子村正。そう、妖刀とか言われているあの村正デスよ。とは言ってもワタシは所謂亜種で女デスが…仲良くしてくださいね?」

「あぁ、うん…?僕は、燭台切光忠。えっと、よろしく…?」

 振り返った先にいたのは、なんだか具合の悪そうな燭台切だった。しかも酷く困惑している様子。…まぁ、気持ちは分からんでもない。ブラックな所に仲間が増えるのは複雑だろうし、しかも女ときたら…ね?

「では、燭台切さん…色々聞きたいことがありマス」

「あぁ、もちろん構わないよ。ここじゃなんだから…僕たちの部屋で」


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