<< >>
▼ cinque
ラッコの水槽に辿り着くと餌やりの時間だったらしく、沢山の人が集まっていたが…目立つ容姿と目付きの悪さが原因なのか、スペルビの周囲は若干隙間ができている。
おかげさまで、スペルビの隣にいる私も楽々である。
「お、始まるみたいだぞぉ」
ニヤリとスペルビが笑ってラッコの方を見ているようだけど…私は全く見えない。
「…ねぇ、全く見えないんですけど?」
文句を言いながらスペルビの服の裾を引っ張ると、一瞬首を傾げ、あぁ。と納得した表情をしたスペルビに抱きあげられて、肩に乗っかる形に。
やべぇよ、いくら私が標準より小さくて軽めとはいえ…大の大人であるにもかかわらず、あっさり肩に乗せるとか…本当に人間か?あぁ、これがヴァリアークオリティー。
「どうだ、見えるかぁ?」
確かに見えるけど、とても恥ずかしいです。…どこのバカップルだよ。
恥ずかしさで真っ赤な顔をスペルビの頭に抱きつく事で誤魔化す。…なんか余計に恥ずかしくなった気もするが、きっと気のせいだろう。
「おい、クコ…?」
「…大丈夫」
グッ。と恥ずかしさを耐えて顔を上げると、飼育員のお姉さんが微笑ましいものを見る表情で私を見ていて…精神的に死にそうになった。
<< >>