あおいそら

予定は未定

 もうこの状況わけがわからないんですけど!
 気がついたら知らないところにいて中学生に退化していたし、学校の名前は赤塚中学校で同じ学年に六つ子がいて、その苗字が松野でクラスに一松とかいうヤツがいるとかもう…意味がわからすぎて吐くわ!吐血するわ!!
 深く考えずに今日もセーラーを着て学校に登校して、目立たないよう適当に一日をやり過ごす…予定だった。
 そう、その予定は目の前で可愛らしく微笑む…末弟トド松によってすべてぶち壊されたのだ。

「…色雲さん、だよね?」

 にこやかに声をかけてきた松野なんとか松さん。
 何松かなんて見た目では全く分からなかったが、クラスメイトの一松は自分の机で寝ているし、偏見だけど十四松とかチョロ松ではないと思うし、そもそも…この声はトド松だ。
 もうすでに声変りが終わっていて本当によかったけど、見分けられる人はほぼいないという事もリサーチ済みなので、見分けがついてる事に気がつかれないようにしなくては。
…あっ、なんだかお腹が痛くなってきた。

「そうだけど…松野君、私に何か用?」

 少しそっけない対応になってしまったが、困った様な顔を意識して作ってみつめる。
 六つ子の誰一人とも関わったことが…まぁ、一松君は必要最低限の会話はしたことがあるが、他の六つ子は見かけたことはあっても話したことなんて一度もなかったハズ。

「用ってほどじゃないんだけど、何読んでるのかなって思って。
 …いつも本読んでるし」

 どうやら、中学生との会話についていける気がしないから、ひたすら家にあった謎のライトノベルを休み時間毎に読んでいたのが裏目に出たらしい。
 というか…トド松は何をしにこの端っこの4組まで来たりしてたんだろうか?
一松に教科書とか借りてたのかなぁ?

「これ?
 これはね、吸血鬼の主人公がひょんなことから異世界に紛れ込んでしまって、日光と闘いながら元の世界に帰ろうと頑張る話だよ」

「何その話!?
 意味がわからなさすぎて逆に気になるんですけど!」

「じゃあ、貸そうか?
 私もう読み終わったし…」

「じゃあチョットだけ読んでみようかな」

「いつでもいいから、読み終わるか飽きたら返してね?」

 本を手渡すと、トド松は何故か嬉しそうな表情で丁寧な動作で鞄にしまった。
 その一連の動作を何となく見届けてから、本も読み終わったしそろそろ帰ろうかな…。と立ち上がって、既に帰る準備をしていた鞄を持ち上げて肩にかける。
 ギッシリと詰め込んだ鞄が重い。

「ねぇ、一緒に帰ってもいい?」

「いいけど…他の兄弟と一緒に帰らないの?」

 いつまでも帰らないトド松に疑問を抱いていると、トド松が恐る恐る一緒に帰ろうと言ってきたので思った疑問をそのまま口にする。
 いつも誰と帰ってるか、なんて興味なさすぎて知らないから兄弟と一緒に帰ってるんじゃないかという憶測でだが。

「うん。
 みんな先に帰っちゃったし、今日は色雲さんと一緒に帰りたいなって」

 はにかむように笑ったトド松に少し疑問を抱いたが、一緒に帰るくらい別にいいかな。なんて今までの努力というか頑張りを投げ捨てる。
 断る方がおかしいと思ったからであって、間違っても、可愛い!とか思ったからではない。
 それに、トド松とか女子としょっちゅう帰ってそうだし、問題ないと思う。

「そっか、じゃあ帰ろっか」

「ありがと!
 あ、僕は末弟のトド松。
 松野君じゃなくて名前で呼んでくれると嬉しいな。
 僕もシキちゃんって呼びたいし」

 あざとく色々要求してきたトド松に、わかった。と頷いて、2人一緒に教室を出た。

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