あおいそら

明日のことを言うと鬼が笑う

 - 泣いて暮らすも一生 笑って暮らすも一生 -

 松野くんと出会ってから数日…。
 時々、松野くんを見かけるようになった。

 ある時は薄暗い路地裏でネコと遊んでいたり。
 またある時はCDショップでお買い物しているのを見かけたり。
 また別の時はパチンコ屋さんに入っていくのを。
 流石に、女の子達と仲良く歩いてるのを見た時は2度見しちゃった。
 そういえば、橋の上でたたずんでいるのも見た気がする…。

 でも見かけるだけで、おしゃべりとかは出来ていない。
 なんだか、忙しそうだったり、タイミング逃しちゃったり、声掛けずらかったり。
 本当はもっと仲良くなりたい…。

 次こそは、次こそは話しかけるぞ!と何度目になるかわからない気合を入れる。
 とりあえず、今日はこの角を曲ってみよう…!

 そう意気込んで曲がると…

「…松野くんが6人!?」

「あっ、シキちゃんだー」

 6人ともカラフルなツナギを着ていて、その中の黄色の松野くんが手を振りながらタタタッと走ってきた。
 他の松野くんは不思議そうな顔でコチラを見ている…。

「えっと、松野くん?」

「あい!十四松でっす!!」

「えっと…?松野くん、ご兄弟沢山いるんですね」

「十四松でいいよ!」

 何してたの、野球?とニコニコ話す松野くんを見て、会えた嬉しさと、見れた笑顔で胸がいっぱいになる。
 しかも、名前で呼んで!なんて言われちゃって…嬉しすぎてどうしよう!

「十四松、この子…誰?」

「そうだよ!
 お兄ちゃん、女の子と知り合いになったとか聞いてないよ!?」

「シキちゃん…だったかな?
 十四松兄さんとは、どういう関係なの?」

 松野くんの兄弟にいつの間にか囲まれて、オロオロしていたら松野くんが、シキちゃんとは、友達!とキッパリ言ってくれたおかげで助かったし、嬉しかった。
 もう私と松野くんは友達…!

「へぇ、そうなんだ…」

「じゃあ、十四松の友達に自己紹介しなくちゃ!
 俺、長男のおそ松」

「次男、カラ松だ。
 よろしくな、カラ松girl…」

「三男、チョロ松。
 十四松が迷惑かけてたら、ゴメンね?」

「四男、一松」

「五男、十四松でっす!」

「って、十四松兄さんまで名乗ってどうするの…?
 僕、末弟 トド松。よろしくね!」

 6人全員名乗った後、示し合わせたかのように、よろしくね、シキちゃん!と一斉に言われて、囲まれて。
 ただ頷くだけが精一杯だった。

「あっ、シキちゃん。
 明日また会える?」

 急に松野くん…紛らわしいから十四松くんと呼ばせてもらおうかな…。
 十四松くんが、小首を傾げながら聞かれたけど、突然の事で上手く頭がまわらない。
 返事もできず、オロオロしていると悲しげな顔で、忙しいの…?と十四松くんに言われて思わず、暇だよ!と叫んでしまった。
 私、いま恥ずかしすぎて、顔が真っ赤だと思う…。


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