31 日帰りで出張

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「仙蔵くん。」
「なんだ。」
「今日は遅くなる・・・多分零時まわるかな。メールはもらっても帰ってこれない。夕飯は買ってくるけど、可能ならお風呂入っちゃって。じゃ、行ってきま」
「待て。」

玄関を開けたまま仙蔵くんをみれば、会社じゃないのかと睨まれる
いい加減自分の眼力を自覚してほしいが、今はいい

どうかした?と首を傾げれば、帰ってくるんだろうな?て聞かれる
それに、日付は越えるけどと頷き、頼んだよ。と仙蔵くんの頭を撫でて家をでた



来月の出張に向けた教育は、半日だけ
けれど、新幹線を使ってもうまく乗り継げて4時間はかかる現地を往復するには
できれば前乗りがいい。子供らがいるからやめたけど

「今月末からくりゃいーのに。」
「月跨ぐと精算が面倒だから嫌です。」
「つか僕の下にきなよ・・・アイツ君を出張に出したがらないから困るんだ。」
「上司には感謝してます。」

上司繋がりで仲良くしてもらってる所長と喫煙室にて
別に吸わないけれど、ペットボトルのお茶に釣られた結果だ

「・・・あ、」
「ん?転職する気になった?」
「なってません。出張、月末からでもいいですよ?」
「お、なら早速手続きを」
「毎日飲み会開かないなら。」
「無理だ。やめ。諦めた。酒はエネルギーだ!」

さ、教育後半いきますか。と、送るなといったものの、念のため電源をいれて問い合わせてみる

「なし。」

また電源を落とし、部屋へ急いだ




新幹線の中で、足元に置いた袋をチラ見する
人数分7つ、停まった駅でダッシュしたり車内で買ったりしたのを併せて、なぜか10個になった駅弁たち
前の駅から乗っていたスーツのおじさんにガン見されたから、出張帰りに持ってるには数が変なんだろう。多分


電車を乗り継ぎ、駅から降りてバスに乗る
深夜料金で高いが、歩いて帰るのは嫌


「ただいま・・・何してるの、」

玄関を開け、飛び込んできた光景にため息
6人が6人、玄関上がってすぐのとこに座ってる

「・・・・・・仙蔵くん。」
「お出迎えだ。」
「怖いから。いいからリビングに」

靴を脱ぎながら喋っていれば、おかえりなさい!と伊作くんと留三郎くんの声が重なった
少し固まったけど、ただいま。と返せば、小平太くんたちにもおかえりを言われることとなり
若干。そう、失礼だから若干

気持ち悪いなって、いや、若干ね、思っただけ。

今まで言われたことなかったから

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