※一部分人を不快にさせる発言(表現)があります。



夢をみなくなった。深く良質な睡眠をとれているのではと言ったのはハンジだったか、リヴァイの苛立ちが目に見えて周りが被害を被りだした先日何かあったのかと聞いてきたハンジへの回答の返しは一般的なもの。それに苛立ちを隠さず髪を乱したリヴァイは、盛大に舌打ちをして蹴り飛ばすように自室のドアを開け早足で廊下を歩いていったのだ


馬との接触(と周りは思っている)で意識不明になったリヴァイが目を覚ましたのは倒れてから三日後。起きて早々舌打ちを漏らし寝ようとするリヴァイを慌てて止めたのは医者だった
結局あれから半年、一切優芽に会っていないのだ。身体の疲労感も精神の疲労感も、前と同じ夢をまた見出して眠れず増すばかり
そんなときは女を抱けばいいといったのはエルヴィンだったか、リヴァイの潔癖性から考えれば凄みをきかせ睨み返すのも道理だろう

「・・・そもそも、俺は女に欲情したことはねぇ。」

まさか男が・・・!?と言ったハンジに逆に驚かされたのもついこの間だ。寧ろ手垢の付いた女に欲情できるとは何事だ、なんかありゃ目から水分を撒き散らし部屋を汚すあれらに、なぜ、欲情できるのか?別に幼子が好きなわけじゃねぇ、うぜぇし、かといって処女が好きなわけでもねぇ、老婆が好きなわけでもねぇがな

「・・・リヴァイ、気持ち悪い。」
「てめぇにだけは言われたくない言葉だ。 」
「提案だが、世の女性にとりあえず謝ったらどうだ?」
「余計なお世話だ。第一俺は、自分が間違っているとは思わない。」



思い出し舌打ちをしたリヴァイは雲行きの怪しい外を見て視界に入った数人の男女に目を見開いた
兵士に休暇などないのが当たり前だろうが、一応週に一度設けられている。今日は、休暇日ではない。ならば班長である自分が休暇届けを承認し兵長団長へとあげるのだ
苛つきのあったリヴァイは階段を降りて官舎の玄関へ向かい私服の四人を睨みつける。リヴァイの出現に足を止め鋭い目を向けられ意味を理解した四人は悪びれず、リヴァイを嘲笑うように班長訓練ですかと尋ねた

「・・・お前たちは何をしていた。」
「休暇に何をしようと何を言われる筋合いもありませんが?」
「俺は、申請書を見た覚えも許可した覚えもない。」
「大丈夫です、兵長と団長に許可は貰っていますから。」

第一僕らいなくても今まで気づいてないですよね?つまり必要じゃなかったんでしょ?ていうか顔こっわ。うちらウォリックのお墓参りしてただけなんですけど。あれだ、潔癖症な班長はまた掃除をさせたかったんだろ?毎日が大掃除だしな。

こそこそひそひそ、リヴァイに対しての言葉につい先日の壁外遠征で巨人に喰われた班員の名前が出、リヴァイは口を噤む。エルヴィンが休暇を認めていて確かに今日特に仕事は詰まっていなかった。ならば自分がこれ以上苦言を零したところで反感は強まるばかり
それじゃと自分を越して階段へ向かう班員にだから班長なんざ嫌なんだと舌打ちを漏らしてしまったリヴァイは、みたあの無表情と階段で反響した声に勢いよく振り返る

「眉一つ動かさないでさ、ウォリックが巨人に食べられちゃった時だって無表情で巨人を倒すだけで。泣いた私がおかしいわけ?」
「あの人のゴロツキ友だちも死んじゃってるんでしょ?」
「オレらの前の班員なんて配属後初壁外でみんな喰われたんだろ?」
「おーこわ、死神かよ。」

好き勝手になにをと言いたくなるが、事実だ。自分が班長を務めた班のメンバーは面白いほど簡単に巨人の腹の中。いくら自身が強かろうが、四人も五人も守れない


俺が全て悪いのか?俺の指示は全て間違っているのか?俺は地下街に戻った方がいいのか?何度目かの自分への問いは、誰も答えをくれるでもなくリヴァイの中でくすぶり続けた


憂さ晴らしとばかりに立体機動を身につけ、訓練場へと向かう。大木にぶつかるギリギリでアンカーを抜いて空中回転をしたり、幹にワイヤーを宛てて方向転換をしたり、むちゃくちゃな動きで気分を紛らわす
ぽつりと目に雨粒が入り、あの光景が前面に広がった。叫び声になっているかは知らないが、リヴァイの口は開き喉が痛むばかり。ひくりと喉が痙攣し、あっという間に嵐になり肺に雨水を受け入れまるで時間はかからない。溺れていくように、弾かれたアンカーと共に意識は沈んでいった

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