「あー、***くんだ!お帰り〜。」
「ただいまです、小松田さん。」
一月ぶりの忍術学園はいつもとは少し様子が違っていて、明らかな殺気で騒々しい
(曲者・・・なら小松田さんが察知・・・凄腕相手ならまぁ、なくはない。か?)
何にせよ、取りあえずは帰ってきたと先生に伝えねばと、職員室へ足を進めた
屋根の上を渡ながら不意にすぐ近くにある木の下根元をみる
それは本当に偶々だった
気配はあるが、小松田さんの追跡や感知能力をかいくぐるだけの実力はなさそうで
ならば一年かと通り過ぎようとすれば、少し先に殺気立つ双忍を見つけ、まさか曲者が近くに?と一年(だと思っていた)を避難させようと下をみた
その偶然の先にいたのは、小松田さんと同じ事務の服を着た少女
(怪我してる・・・曲者にやられたのかな?)
「っ!?」
急に目の前に現れた私に叫びそうになった少女の口を塞ぎ、微笑む
「なにもしないよ。初めまして、だよね?新しい員さんかな?ちょっとしつれいするね。」
ヒョイと抱き上げ屋根の上に戻れば、死人のように蒼白な少女は「なんで」と繰り返しブツブツ言う
(・・・先生には後ででいいかな。)
ほっといたら死にそうな少女を保健室へ連れて行こうとして、自分も怪我をしているのだと思い出しやめた
掠り傷だが、伊作は過剰に反応する
殺気立つ同輩や後輩かいるというのは、つまり危険だということ
少女が巻き込まれたら大変だと、誰にも見られることなく自室へはいり、戸をしめた
「手当てするね。あ、私は六年い組*****。一月ほど留守にしていたから、初対面だよね?」
必要な手当ての道具をそばに置いて座れば、少女と目が合う
「わ、たしを知らない・・・の?」
「多分この一月で入ってきたんだよね?」
「そ、そうよ。」
「ならやっぱり知らない。さ、足出して。」
「・・・私を殺さないの?」
「曲者には見えないし、もし曲者なら簡単に始末できそうな感じだからね。今のところ予定はないよ。」
「・・・私、天女様なの。」
「なら羽衣を探すの手伝いましょうか?ほら、足出して。」
信じてないでしょ。と不満気に呟く少女は、漸く足を差し出してきた
その綺麗な足にある裂傷を治療して、ふと口からでる
「予防接種、早く開発されないかな。」
という時代錯誤な言葉
けれど、少女はこの言葉に過剰な反応をみせた
「あ、あなた転生主かなにかなの!?」
「え?」
「だからっ、だから私が愛されないのね!」
本当は女なんでしょ!?と体をまさぐられ、くすぐったくて少し笑う
「男装、じゃないの?」
「れっきとした男だからね。」
「・・・平成って知ってる?」
「・・・前世は、平成で女だった。」
みさだめるように少女をみれば、少女は震えた声で話すこと、信じて。と口にする
取りあえず頷けば、少女の口から非現実的な言葉がポロポロと零れだす
神社?に毎日「トリップして逆ハーで愛されたい!」と願っていたら、ある日それが叶えられ、空から落下
留三郎にキャッチされ、なんだかんだ(学園長の思いつきにも等しい)で住み込み事務員として働くことに
でもキャラクターが中々愛してくれなくて、愛されることに集中してたら仕事が疎か(ようはやらなかった)になり、くノたまとは険悪で、今殺されそう
「・・・自業自得じゃない?」
曲者じゃなく事務員に対して殺気立っていたのかと、深いため息が漏れた
「た、助けてよ!」
「え゙・・・じゃぁ仕事ちゃんとする?」
「す、るわ。」
じぃ〜っと見つめれば、少女は泣きそうになりながら字がわからないという
確か蛞蝓の通ったあとみたいな字を書く人もいるし、自分も苦労した
「字なら教えるよ。」
「み、水仕事は手が、」
「手入れを教えて上げようか?」
「・・・なんで、そんな親切なの?」
死にたいのか、生きたいのかよくわからない少女に、首を傾げてしまう
「死んだと思ったらなぜか人の声がして、目をあけたらなぜか視力はおちてる・・・まぁ生まれたての乳児になってたから当たり前だけど。性別も時代もなんかおかしいし。そんななかで生きてきたから、大変さはわかるつもりだよ。」
「・・・・・・信じていいの?」
「いいよ。」
「・・・本当に、助けてくれるの?」
「努力を惜しまないと約束してくれるなら、」
「・・・・・・頑張るわ。」
なら行こうか。とまた抱き上げれば、きゃ!なんて可愛い悲鳴をいただいた