- ナノ -
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うらやましいな、って思うんだ、と彼女は言った。私は怖いから。いろんなものを手放して、冒険に出るのって。外の世界に、どんなにきれいな空があって、すてきなひとたちがいたとしても。
周りにあるものを何より大切に思えることも素晴らしいことだ、と竜。そう? と問いかけて彼女は笑んだ。満ち足りたような、それでいて、どこか哀しげな笑みだった。
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