- ナノ -


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 街の片隅で揺れる橙色の花を、竜は見ていた。それは雛罌粟よ。通りかかった少女が微笑む。名前を知ったらね、その花は他の花とは違う、特別な花になるの。きっとそれは、雲も、空も同じで……人も同じかもしれない。
 竜は少女を見、もう一度、花を見た。次にこの花を見たとき、少女のことも思い出すだろう。そう思った。


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