- ナノ -


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 もとは同じ竜だったのだ。だが目の前の生き物には、その頃の面影がほとんど残っていない。剥がれかけた鋭利な鱗。不自然なほど大きく突き出した牙と爪。骨張った体に、そこだけやけにぎらぎらと光る眼。
 他国や竜族に対抗する「兵器」として、人が竜から作った「何か」。周りにある全てを傷つけ破壊し続けてきた。しかし、それももう、終わりだ。
 竜は彼の急所を引き裂いた。耳を劈くような叫び声が響く。竜の瞳に哀しみの色が宿った。そしてそれと同じ光が、倒れゆく彼の瞳にも流れた。たった一瞬。


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