- ナノ -


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 桜は、どんなにそのときを待ち侘びていただろう。来る日も、来る日も力を蓄えて、少しずつ蕾を膨らませ、ようやく花を結んだ。それなのに──僅か数日で、雨風が全てを攫っていったのだ。
 地面に散った儚い花びらを、竜は空から見ていた。それでも懸命に生きようとするかのように、花は、今、土の上で咲き乱れていた。


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