- ナノ -


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 よく鼻で笑われちゃうんだけどね、と彼女は言った。ばあちゃんが森で竜に会ったことがあるらしくて。私はその話、信じてるんだ。
 やはり笑われてしまうのだろう。そう思って隣を見ると、彼は驚きの表情を浮かべていた。奇遇だね。僕も父さんが会ったことあるって──翼で雨から守ってくれたみたいで。僕もそれ、信じてて。
 わあ、すてき! と彼女は声を上げた。春の光のように、うれしさに満ち溢れた表情で。


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