- ナノ -


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 ここには竜と人しかいないってくらい、物も何もあったもんじゃないけどさ、と彼は言った。でも他でもない、竜と人がいるんだよな。これが俺らの宝物ってわけ。
 ものすごくいろんな物が流通してる、素晴らしい建物がそこかしこにある街にも憧れるけど、ここはここでいいところだと思ってるよ。そう言って特大の笑みを浮かべた彼のことを、竜は時々、思い出している。


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