- ナノ -


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 竜は、砂浜に開いている小さな穴の数々を思い出していた。あの穴からは蟹たちが顔を覗かせていたものだ。しかし、目の前にあるのは一面の雪。こんなところに蟹などいるはずもなく、ぽつぽつと開いた雪の穴に首を傾げる。そのとき、頭に水滴がぽたりと垂れてきた。木々に積もった雪が溶け始めているのだ。雫は地面の雪にも落ち──どうやらそうして、無数の穴ができたらしい。竜は思わず、木と穴をしげしげと眺めた。


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