- ナノ -


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 向こうの空から人間の悲鳴が聞こえてきた。どこか哀愁が漂っている。しばらく飛んでいくと、竜は、二人の人間を背に乗せた飛竜に出会った。先程の悲鳴は、後ろに乗った御仁のものらしい。震えながら前の人間にしがみ付いている。僕たちはお望みの場所に人を運ぶ仕事をしてるんだけどさ、と飛竜。竜乗りにあんまり慣れてない人を運ぶと、やっぱりこうなっちゃうんだよね……。
 飛竜と前に乗っている人間は特別な訓練を受け、同乗者の安全を確保しているらしいが、そうは言っても怖いものは怖いはずだ。竜はやや後ろの人間に同情しつつ、彼らを見送った。


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