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 わくわくするほうに進めばいいよ、と彼女は笑う。ドラゴンさんは、どうしたい? 竜はしばしの間ののち、言った。世界のまだ見ぬ場所を見てみたい、と。彼女はあくまで明るい。竜の言葉を聞いて、それなら決まりね、と手を鳴らした。彼女やこの街の人々と暮らした日々は竜にとってかけがえのない時間だった。だがそれでも、翼は風に誘われる。寂しさを抱えながらも、笑顔で竜を送り出してくれた彼女たちに、竜は深く首を垂れた。


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