- ナノ -


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 その翼に風を受け、初めて空を飛んだときのことを、竜は覚えている。竜には父親も母親もいなかった。だが、決して自分ひとりで飛べるようになったわけではない。今なら竜にはそれがわかる。
 隣にいてくれた掛け替えのない存在を竜は思い出す。時間も場所も、遥かに遠く離れてしまったけれど、竜は心の中にいるその友と、今も一緒に飛んでいる。
 

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