- ナノ -


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 横たわる竜を、森の生き物たちは草木の間から見ていた。誰も動かず、鳴きもしない。重い静寂は、しかし突然破られた。一羽の子兎が竜の前に飛び出し、転んだのだ。空気が瞬時に張り詰めた。竜は子兎に顔を近づけ、……そっと、鼻先で子兎が立つのを手伝った。つぶらな瞳で見つめる子兎に、竜はひとつ、小さく頷く。森の緊張は、緩やかに解れていった。
 

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