- ナノ -


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 いつでも帰ってきていいんだよ、と彼は言った。優しく微笑みながら。君は旅する竜で、飛ぶのをやめたりしないだろうけど、それでも帰ってきていいんだよ、と。
 竜は時折、彼のことを思い出す。その度、心にあたたかな灯火がともるような感じがした。そこは竜の生まれた場所でもなんでもない。しかし確かに、故郷と呼べる場所だと竜は思った。


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