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 夜に架かる虹がある。海の向こうから来た旅人にそう聞いた竜は、旅人が虹を見かけた地へついに辿り着いた。来る日も来る日も夜空を見上げ、飛んで、竜は辛抱強く虹を待った。果たして、満月が明るく輝く夜、遠くでさらさらと雨が通り過ぎる音がして、虹は架かった。この地に住まう者によると、夜の虹は祝福の象徴なのだという。虹が消えるまでの僅かな時間は、しかし、不思議なことに永遠にも思われた。


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