その4
- ナノ -



先生の配慮 4

 決まってしまったことはもうどうしようもない。
 それなのに、学活の時間が終わると私はただ悲しくなった。
 信じられないという気持ちもまだあるにはあったのだが、それよりも現実が肩に重くのしかかってきたのだ。学活の続いている間中は、もしかしたらあれは何かの間違いなのかもしれないとか、そんなあわい期待があった。しかし学活が終わればそんなものは絶えたも同然、である。もともと一度決まったことを覆すというのは無理に等しいことなのだから、なおさら。興奮していた気も静まって、それがはっきり分かったのだ。
 本当は心の奥でちゃんと気づいていたのかもしれない。係や委員会を決めるとき先生が私ばかりを有利な状況においてくださることはないと。そう、それは公平ではない。私のほかにも図書委員をやりたいという人がいて、当たり前なのである。私がただ単に「先生の配慮」にしがみつき、甘えていただけなのかもしれないではないか。
 そう思うと余計に悲しくなってきた。悔しい気も、怒りもわいてはこなかった。ただあまりにも悲しくて、休み時間に、私はトイレの中で声を殺しながら泣いたのだった。
 今考えると「委員会ごときで」と笑い飛ばしてしまいそうになるが、それでも。そのときは図書委員になろうと必死だったのだ。その、どこまでもまっすぐだった心だけは、忘れたくないと思う。


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