- ナノ -
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もしあのまま、旅に出ず、人の街に留まっていたなら。竜は時折考える。いまとは違う出会いがあったかもしれない。移り変わってゆく街を見守ることができたかもしれない。けれども。街を越えて続いていく道の先も、空の向こうも、知らないままだっただろう。竜にはどちらが正しかったかはわからない。ただ、後悔はなかった。
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