- ナノ -


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 おれなんかさ、と、その人間は言った。何やっても中途半端で、たいしたことないけど。竜はその横顔を眺める。そうだとしても、やりたいことがあるのだろう。竜の言葉に、彼はうなずいた。ああ。どうしようもなく、な。頭上に広がる、突き抜けるような青空のように、彼の目はまっすぐ前を見ていた。


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