- ナノ -


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 誰かに形を変えられるのはいやではないのか、と竜は問うた。彼女は笑って言う。私の作った竜鞍のこと? それだったら、どんどん変えていってみてほしいな。もうちょいこんなふうだったらいいのになあって思う人にいろいろ作り替えてもらったほうが、使いやすい鞍になるでしょ。欲がないな、と竜。彼女は首を振った。欲ありすぎだよ。進化した竜鞍で、もっといろんな人に安心して竜に乗ってほしいんだもん。ぽんぽんと鞍をたたく彼女は、屈託のない表情をしていた。


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