- ナノ -


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 彼女は見守るようなやさしい表情で、建物の立ち並ぶその場所を見ていた。竜が不思議そうにしていると、彼女はゆっくりと語った。昔ね、ここは一面の菜の花畑だったのよ。春が来るたび、嬉しくてね。友達の小さな竜とはしゃいでいたのよ。彼女の瞳の向こうには、今もなお、菜の花が風にそよいでいるようだった。


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