- ナノ -


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 まったくもう、と彼女は夢中で団子を頬張る弟を見た。せっかくこんなに桜が咲いてるのに、食べてばっかりなんだから。花より団子だよ、と弟は次の団子の串に手を伸ばしている。串を手に取る影が、もうひとつ。あら、ドラゴンさんも花より団子なの? と姉は少しあきれて言う。竜はにやりと笑った。わたしは、花も団子もだ。竜は風にそよぐ桜を愛おしそうに眺めていた。団子の串を大事に大事に持ちながら。


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