- ナノ -


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 ねえ、竜だっていつかは死んじゃうんだよね。彼女は沈む夕日を見ながらそう言った。動かなくなった竜って見たことないし、私たちより長生きだから、ずうっと生きてるような気がしてさ。ややあって竜が言った。竜は命を失うと、その竜の持つ性質に最も近い自然のなかへ溶けこんで、そこへ還ってゆくという。だから、時が経てば、その竜の姿形は完全になくなってしまうのだ。
 日はゆっくりと沈みきった。彼女は言った。さみしいね。でも、自然のなかでみんな見守ってくれてるんだね。ああ、と竜は頷いた。


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