- ナノ -
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投げかけようとした言葉は、宙をさまよった。昨日まで彼女のそばにいた竜はもういない。この街を訪れた旅人が話したのだ。竜が人を襲ったと。その話は翼が生えたようにすぐ街中へ広がり、やがて竜たちはみな追い出された。何もしていないのに。いつも一緒にいてくれたのに。静まり返った部屋で、彼女はひとり、すすり泣いた。
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