- ナノ -


185

 甘い香りが竜の鼻腔をくすぐった。思わずごくりと唾を飲みこむ。目の前には繊細な作りの竜の小像。食べちゃだめだからね、と人間はいたずらっぽく笑う。どうやらこの小像、チョコレートなる菓子からできているらしい。菓子細工のコンテストに出す竜、僕の自信作なんだ、と彼は胸を張った。小像が見事なのでずっと眺めていたい反面、あまりにおいしそうで、竜はすっかり目を奪われている。


[ ]