- ナノ -


184

 いつだったか、知り合いの海竜は言っていた。この海には、ほとんど誰にもその姿を知られることのない竜たちもいると。人との戦争により、竜や多くの生き物が西の彼方に去った。海の中の、人に知られることもなかった竜たちもまた、同じようにいなくなったのだろうか。水に入ることができない竜には確かめようもない。ただ彼は、空を飛びながら、彼自身も見たことのないその竜たちに静かに思いを馳せていた。


[ ]