- ナノ -


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何のために生きているのだろう、とその戦竜は思った。ふと。近づく者全てを、鋭い牙と爪にかけて屠ってきた。そのように彼は人間に作られのだ。だが、何のために。何のためにこんなことを。痛々しく傷だらけになりながらも決して反撃しようとしない竜を目の前にして、戦竜はわからなくなった。その瞳から、涙がひとつこぼれ落ちた。


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