- ナノ -


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 竜になりたいって無性に思うことあるんだよ、と彼女は竜に言った。おっきな翼のある竜になって、空を自由に翔けまわるんだ。両手を広げてくるりと回る彼女に、竜はほう、と相槌を打つ。でもね、こう思ったりもするんだ。人間でいるのがいやで竜になったとしたら、きっと竜になっても別のものになりたいって思っちゃうんだろうな、って。そうして彼女は空を見上げた。いま、等身大の彼女自身ができることを探すように。


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