- ナノ -


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 赤、青、黄、白。とりどりの色が入った紙風船が、少女の手を離れて宙に浮かぶ。竜はその紙風船を、鼻先で軽やかに突いて彼女に返した。少年が驚いて言う。紙風船、竜がつぶしちゃうかと思ったよ。少女は微笑む。とてもやさしい竜なのよ。
 竜は午後の日差しのように、穏やかなまなざしで彼女を見守っていた。


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