- ナノ -


107

 ちいさな頃に竜を見たことがある、と彼は言った。森の中で通り雨に遭った時、竜が雨から守ってくれたんだ。それほんとなの? と、彼女は笑う。彼は懐かしそうに目を細めた。ほんとだよ。僕はいまでも信じてる。あの森には優しい竜がいるって、ね。窓の外の、雨上がりの空で、虹の橋がきらめいた。


[ ]