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- ナノ -


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 竜は空を見ていた。夜明けを告げる薄紫。朝一番の明るい白。突き抜けるような蒼天。午後のやさしい日差しに包まれた穏やかな青。橙から黄金の時を経て、水色、藍色、深い紺の帳が降りる。その姿は刻々と移り変わってゆく。しかし、空であることには変わりはない。変わることと変わらないこと。それはきっと、同時に起こりうるのだ。


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