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- ナノ -


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 そしてそこには白だけがあった。白が立ち込めている。竜は吹雪を思い出した。だがいまは、鋭く吹きつける雪も、唸るような風もない。静まりかえっている。竜のはばたきさえ、この白を掻き乱すことはできない。深い霧に包まれながら、竜は思った。白い闇。闇はいつも漆黒とは限らないのだ、と。


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