- ナノ -


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 おや、と彼は思った。庭に小さな桜の花びらの吹き溜まりができている。様子を見ようと家の外に出ると、花びらが動いた。桜色の小竜だった。
 小竜は彼をまんまるの瞳で見つめ、手を振るように尻尾を揺らすと、そのままどこかへ駆けていった。春風が吹き過ぎるように。


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