- ナノ -


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 街の片隅の、人によってきれいに草が抜き取られていた場所に、もう青々と新たな草が生え揃っている。酢漿草や、春紫苑、白詰草。野花も顔を覗かせ、笑うようだ。
 竜は首を伸ばし、早くも白い綿毛の姿となった蒲公英に顔を近づけた。その僅かな動きで、綿毛が幾つか、ふわりと宙に舞う。春の訪れを喜ぶように。


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