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 ふと彼女は呟いた。持ちすぎなのかも、と。伏せて休んでいた竜が顔を上げ、彼女の方を見る。それに気がついた彼女は言葉を足した。いや、ね。生きていくためにほんとうに必要なものは、もっとうんと少ないのかもって。ドラゴンさんのこと見てたらそう思って。
 何もなくとも、空や大地はある。竜はゆっくりとそう言った。空と大地かあ。彼女は目を細め、家々の向こうの空を見遣った。


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