- ナノ -


757

 人のこと、怒ってないの? と彼女が竜に尋ねる。竜は呟くように言った。全く憎んでいないと言えば、嘘になる。許せないと思う気持ちも、消え去ることはないだろう。だが──。
 竜は空を見上げた。木々の隙間から見えるそれは、どこまでも高くて、青い。つられて空を見る彼女に、竜は言う。君が、竜に何かをしたわけではない。
 彼女は空から竜に目を移した。竜の瞳にも、吸い込まれそうなほど深い空の青が光っていた。


[