いつの間にか雨が降りだしていたことに気付いたのは、ソレを見たからだった。

手で口を覆った女性従業員が見上げる先に視線を向ける。
すると、どうやって登ったのか、ロビーのガラス張りの天井に誰かが倒れているのが見えた。
血塗れのその身体に降りだした雨が無慈悲に打ち付けている。

「きゃああああ!」

なまえ達と同じように何事かと駆けつけてきたカップルの女性のほうが死体を見て悲鳴をあげた。

「零さん」

「ああ」

零さんの行動は早かった。
スタッフの一人を捕まえると、すぐに警察に電話するように言って、自らその場を仕切り始めた。

「大丈夫です、騒がないで。絶対に外に出ないで下さい」

私はその間、あの死体はどうやってあそこに引き上げたのだろうと考えていた。

まさか、ガラス張りの天井の上で揉み合いになるわけはないから、どこか別の場所で殺してからあそこに上げたのに違いない。
でも、いったい誰がいつどうやって?

「なまえ、大丈夫か?」

「私は平気です。それより、零さんこれは」

「ああ。殺人事件だ。孤島という密室を利用した」

激しい風が吹き付け、ガラス窓を振動させている。
外を見ると、既に台風のような有り様だった。

密室殺人。

まさかこんな所で事件に巻き込まれてしまうなんて。


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