成長一は詰め

※は死ネタ


【猪名寺と摂津の】俺一人いなくなっても、世界は回り続けるだろうな。寂しそうでも悲しそうでもない、当たり前の顔で君はそんな悲しいことを言う。「きりちゃん、私…きりちゃんのいない世界なんて嫌だからね」私の言葉に君は不思議そうに瞬きを繰り返し、八重歯を覗かせて微笑んだ。ねぇ、きり丸。例えば君が明日いなくなったら、私はきっと迎えに行くよ。それが永遠の別れだったら、生まれ変わって会いに行くよ。

//どこにいても、きっと見つける

【佐武と夢前】「三治郎、伊賀崎先輩の毒虫が逃げ出したって!」「えぇ〜またぁ!?」渋々立ち上がる三治郎は、名残惜しそうに絡繰の設計図を文机に置いた。臨時の委員会。まだ陽は高い。青く生い茂る草に腹這いになり、小さな虫を箸で摘まむ。「なぁさんじろー、」「なあにー?」青臭さと、泥臭さ。日向の暖かさ。「終わったら、此処で昼寝でもしようか」「あ、いいねぇ!」硝子玉のように透き通る瞳が輝いて、向日葵みたいな笑顔が眩しくて、なんだかとても愛しかった。

//むせかえるような夏の匂い

【皆本と山村】言葉にすると安っぽくて、曖昧で、何処か嘘臭くて。守れない約束をするみたいで、その言葉はどうにも好きになれなかった。想いはいつもそこにあるのに、いざ声に出そうとすれば、喉の奥に引っ掛かっては押し込めるの繰り返し。消えない蟠りをどうすればいいのか、僕は解らない。「…喜三太」「どうしたの金吾?そんなに強く抱き締めたら苦しいよぉ」「あの、な」音になろうとした声を、重なる唇が飲み込む。「好きだよ、金吾。大好き」愛しいその子が紡いだそれは、僕が求めた言葉そのものだった。

//(愛してる、言えないくらい、愛してる。)

【黒木と二郭】小さな身体はくるくると忙しなく部屋中を駆け回り、汚れを拭い去ってゆく。その傍で、小さな脳みそはくるくると忙しなく思考を重ねる。「はぁ、」と溜め息を漏らしたのは、どちらが先か。顔を見合わせ、二人は苦笑する。「伊助、少し休憩したら?」「庄左ヱ門こそ」忽ち空気は和らいで、自然と笑みが零れた。「じゃあ、一服しようか」「ああ、そうしよう」茶葉の香りが狭い部屋に広がる。くるくると忙しなく過ぎる二人の日常と、束の間の休息と。

//落日に、ならんだふたり

【加藤と笹山】差し出された手を払い除けるのが上手い子だと思った。誰も守らず、誰にも守らせず。背中はがら空きの癖に、心だけは肋骨より硬い何かで覆って隠したまま。その背を抱き締めるのが、この手だったら、その心をに触れるのがこの指だったら、どんなにいいだろう。「兵太夫、笑えないなら笑わなくていい」本当のお前が見たいよ。掴んだ手首は想像していたよりもずっと細くて、簡単に折れてしまいそうで、なんだか悲しくなった。やっと歪んだその顔、一粒の涙が零れて、君の内側で何かが壊れる音がした。

//やっと見つけた、だから俺のものだ

【猪名寺と摂津の】失うなら、初めから無くていい。友情も、愛も、夢も、未来も。悲しみの根源さえ絶ってしまえば、前よりきっと幸せになれるから。そんなひねくれた思考回路の少年は、いつしか過去の自分の姿になっていた。一番近くの、優しさに触れて。弱く甘くはなったけど、こんな自分自身を、前より愛せているようだ。
//「きらい、だった。」

※【佐武と夢前】首筋に苦無が突き刺さったその瞬間、痛いと思うと同時に少しだけ嬉しかった。長年この世に縛り付けられていた生が、漸く解放される。「ね、僕…ちゃんと生きたろう…?」君のいない人生を全うしたんだ、胸張って君のもとに逝けるね。「ああ……虎、若」静かに世界が色褪せて、ふわりと体が軽くなった。

//(ようやく会える)

※【皆本と山村】笑った顔が好きだった。己の生も残り僅かと悟り、金吾は不器用にも胸の内を吐露する。「金吾、死んじゃやだぁ…」薄く開いた金吾の目尻に、喜三太が溢す涙が次々と落ちる。雨降る空を見上げているようだと、金吾は小さな笑みを浮かべる。雨が降ったら、その後は?「ね、喜三太…」生きることが叶わないのならどうか、泣き顔を笑顔に変える魔法がきっと空にかかりますように。

//この涙が虹にかわればいい

【黒木と二郭】「生きる悦びってやつを、一度でも感じたことがあるかい?」教科書を眺めながら、庄左ヱ門は伊助に訊ねる。背後では、雑巾を絞る音が聞こえた。「さあ、どうだろ…庄左ヱ門は?」曖昧な返答に、庄左ヱ門は微かに微笑む。「僕?僕はねぇ、」どうだろうね。振り返ると、不思議そうに首を傾げた伊助と目が合う。悪戯な笑みを浮かべ、庄左ヱ門はその腕をそっと引き寄せた。

//この一秒を切り取って

※【加藤と笹山】「いつか、この生を終えたらさぁ」鼓動に合わせて胸から吹き出す血で自らの掌を汚しながら、団蔵は目の前の綺麗に歪んだ泣き顔を見つめて微笑む。「来世で、一緒になろう」俺、待ってるから。そう言って微笑んだきり、団蔵は動かなくなる。「そんなこと、言わないでよ…!」今すぐ死んじゃいたくなるだろ。震える声は冷たい頬に落ちる涙と共に、地に吸い込まれて見えなくなった。

//はじめから飛べるわけもなく




title:診断メーカーより

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