成長団兵詰め

成長※六年生

【加藤と笹山】言葉なんて、なくていい。お前を傷つけてしまうだけだもの。形無いそれは、僕が使えば途端に鋭い刃へと変わってしまう。そうして、君の胸を突き刺す。「言葉なんて、なくていい」そんな僕の言葉に、君は酷く悲しそうな顔をして笑った。「…俺はさ、お前の綺麗な声が好きだよ」ねえ団蔵、お前の言葉は優しいね。今口を開けば言葉より先に涙が溢れそうで、ありがとうも言えずに僕はただ唇を噛んだ。

//は

【加藤と笹山】曖昧な気持ちを誤魔化すように笑っているうちに、あっという間に季節は過ぎ去り、いつしか君は僕の知らない場所にいってしまった。時々思い出しては胸が痛む、この気持ちを愛と呼ぶのだろうか。それなら僕は、これから何処へゆけばいい?答えを教えてくれる、優しいあの子はもうこの世にいない。

//せいし

【加藤と笹山】例えば僕がさ、君を愛したとして。それでも君は、僕を愛せないだろう。例えば僕がさ、君を嫌ったとして。そしたら君は、僕を欲しがるだろう。例えば僕がさ、君を殺したとして。そしたら君は、何も出来やしないだろう。例えば僕がさ、僕を殺したとして。それでも君は、笑って生きてゆけるのだろうね。

//しこう

【加藤と笹山】※暗殺実習
掌にこびりつくのは誰かの命。空気に触れれば赤錆のように変わる生臭いそれに、僕も生かされているだなんて吐き気がする。髪にまで飛び散ったそれは、洗い流したところできっと永遠に消えてはくれない。お前も今頃、何処かで同じ色を見ているのだろうか。お前の優しい筈の掌からも、同じ臭いがするのだろうか。汚れてしまった僕の髪でも、いつものようにその手で触れて、綺麗だと笑ってくれるだろうか。

//汚れ

【加藤と笹山】「あのさぁ兵太夫…その、付き合ってくれないか?」頬を染めた団蔵は、真剣な表情で兵太夫の目を見つめる。「お前っ…なに、言って…」思わずつられて赤面した兵太夫は、その熱い視線に耐えられず俯く。「なあ兵太夫、付き合ってくれるか?……字の練習に!」「!!」一瞬にして凍りついた空気、団蔵の右頬に兵太夫の平手打ちが炸裂した。

//みだれ

【加藤と笹山】酸素の無い水中は、僕の声を伝えない。体は光を避けるように底へ底へと沈んでゆく。それならきっと、言える筈だ。今ならきっと、言える筈だ。君に伝わらないのなら、君が好きだと言える筈だ。素直になれずに痛んだこの胸だってきっと、癒える筈だ。涙さえ溶けて見えなくなる、海に抱かれて僕は眠る。次息をする時にこの口が溢すのはどうか、優しい言葉でありますように。

//いたむ

【加藤と笹山】咲いた秋桜 秋桜咲いた。独り言のようにそいつが歌う歌を、ぼんやりと聴いていたいつかの昼下がりを思い出す。鏡に向き合う今現在の僕。首筋に残るのは、幾つもの赤い痣。面倒なことに一夜明けても消えない痕。無数の紅が白い肌に散り、それはまるで花弁のように。まだ薄明かるい部屋の片隅、そっと指でなぞり、人知れず僕は口ずさむ。咲いた秋桜 秋桜咲いた。

//こういのあかし

【夢前】※三→兵→団
「僕ねぇ、嘘を吐いてるのかもしれない」兵ちゃん、君に協力するって言ったけどね。応援するって言ったのにね。どんなに頑張っても振り向いてもらえない可哀想な君に、どうやら僕は恋をしたようなのです。本当、誰も報われない。その不必要な好きをせめて半分、僕にくれたらいいのに…なんて。

//かなわない

【加藤と笹山】夢など見なければいいと願っても、それでもあの日の夢を見た。瞼の裏に焼き付いた君の笑顔に、僕の心は酷く怯える。朝など来なければいいと願っても、それでも日は昇った。夜明けの薄暗闇に、僕の心は酷く脅える。…死んでしまおうか、そうしようか。悲しみなど見なくていいように。そんな勇気もないのだと、何処かでわかっている癖に。

//心中

【加藤と笹山】壊れてしまったのは、果たして何だったか。特別自信があった絡繰か、この頭か。パラパラと溢れ落ちるのは、外れた螺か、それとも涙か。なくしてしまったのは何だったか。大事な薇か、優しい記憶か、それとも君か。亡くしてしまったのは何だったか。わかっているのにわからない振りをするこの心を生かす心臓だけは、僕からなくなることはなく、今日も不安定に、それでも絶えず動き続ける。

//けっかん




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タイトル補足↓

は/言葉、唇を噛み締めた歯、刃せいし/生死(死んでる君と生きてる僕と)静止(何処にも行けず立ち往生)
しこう/私考(自分の考え)思考(思い巡らすこと)恣行(欲しいままに行うこと)
汚れ/よごれ(物質的に不潔なところ)けがれ(倫理的、道徳的、精神的に不潔なところ)
乱れ/心の乱れと字の乱れ
いたむ/痛む、悼む
こういのあかし/行為、好意の証かなわない/叶わない、敵わない心中/自殺、心の中
けっかん/欠陥、血管

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[しおり]



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