「倉持、チーターって呼ばれてるの?」
唐突にそんな話を振ってくる。
この前の試合で盗塁した俺に沢村がそう叫んでいたからだろう。
「あ?まぁ足速ぇからな!」
足の速さには誰よりも自信がある。
もちろん足の速さだけじゃダメなことはわかっている。
だから、今後の俺の課題は塁に出るための…
「ヒョウじゃだめなの?」
人の思考を捻り潰す発言をするあたり、みょうじは変わってる。
「は?」
みょうじは整理していた写真のいくつかをピックアップして俺の前へ並べる。
あ、すっげぇムカつく顔並んでるわ。
「稲実のこのハーフの人のほうが速いんだよね?じゃあこの人がチーターで、倉持は…」
「お前後で校舎裏集合な」
「なんで?」
「絞め殺す」
一枚握った写真をぐしゃりと握り潰す。
別に神谷が気にくわねえわけじゃねえけど。
そそくさと残りの写真をフォルダーへ戻すみょうじ。
一瞬でそれを取り上げる俺。
「倉持様がチーター様ですよ。もちろん。チーター様肩を揉ませていただきましょうか?」
「おう、頼むわ」
「へへっ、チーター様、だいぶ凝っておいでですねェ」
「随分恨みがこもった揉み方だなぁ。お、この写真の純さん良く撮れてるじゃねえか。」
「そ、それは、激レア純さんの笑顔ショット!!」
「ま、今後も頑張れや」
「…っく」
俺はそっとポケットに純さんの写真をしまったけど、これ俺が持っててもきめぇだけだわ。